公益社団法人 日本医業経営コンサルタント協会

2026年6月号医業経営の現場から file139 北海道・東北地区

医療法人社団 須藤皮膚科医院 「来院1回で完治」を志向 1日200人超の地域皮膚科

医業経営の現場から

file 139 北海道・東北地区

「来院1回で完治」を志向
1日200人超の地域皮膚科

研究から地域医療へ

山形県南陽市で、三代続く須藤皮膚科医院。理事長・院長の須藤 一氏は、研究・教育・臨床を行き来してきた経歴を持つ。祖父が内科、父が皮膚科という医師の家系に育ったが、「親から医者になれとはひと言も言われたことがなかった」と振り返る。医学の道に進んだきっかけは、親戚が難病で急逝したことだった。

順天堂大学時代は主としてアトピー性皮膚炎の研究に携わった。3年半、米国・スタンフォードでの研究経験も。「研究は面白く、このまま研究でやっていくのかなと思っていた」という。

そうした中、父が舌がん、母が肺がんと両親が相次いで病に見舞われ、「結局6年ほど、母の介護でずっと付き添っていた」。これを機に大学を離れ出身地に軸足を移し、地域医療の最前線を支えるに至っている。

医療法人社団 須藤皮膚科医院 概要

須藤皮膚科医院の外観
理事長・院長
須藤 一
所在地
山形県南陽市二色根75-9
診療科目
皮膚科、アレルギー科

地域唯一の皮膚科

同院は60年以上にわたり地域の皮膚科医療を担っている。現在は周辺地域の皮膚科閉院も重なり、実質的に“地域唯一”の皮膚科に。「20km圏内に皮膚科は当院だけ。隣の米沢市の皮膚科も徐々に減少し、今も新潟や宮城からも患者が来る。中には100km近く離れた福島から来る患者も」とのこと。患者数は1日150~240人ほど、夏場は290人くらいになることも。それでも「父の代は360人くらい診ていた時期もあった」という。

患者数は多いが診療方針は明快だ。「長々と通院を続けることなく、1回で治すことを目標にしている。どんなに混んでいても的確に診断する、できる限り早く治す、それを一番大事にしている」。

皮膚疾患は命に直結しないと思われがちで、受診が遅れるケースも。「頭もかゆい、顔も赤い、手もかぶれている、足は水虫で、あといくつかあるのですがと家族6人が一気に来ることも」。そんな複数の症状を抱えた患者は少なくなく、短時間で全体を見立てる必要がある。

2〜3分診療を支える
スタッフの判断力

しかし1日200人超の外来では、診察時間は1人当たり2〜3分程度が限界。「どうやっても2分か3分で回さないと終わらない。200人いたら、下手すると夜9時を過ぎてしまう」。そこで重視しているのが、スタッフの判断力だ。「看護師さん、事務さんが自分で決めていいことはたくさんある。1人ひとりが判断して、コミュニケーションしながら動き、疑問点がなければ私には『こうしました』と言ってくれればいい」。

職員は全員常勤で、20代後半から60代まで幅広い世代が働く。30年以上勤務したベテランが退職したが、世代交代も順調に進んでいるとか。一方で、人材育成の難しさも感じている。「今は、教え方が合わないという理由で辞めてしまう時代。昔みたいに『言われたことをやっていればいい』ではない。だから1人ひとりに『どう教わりたいか』を聞くこともある」そうだ。

須藤皮膚科医院のスタッフが集まった懇親会の集合写真
須藤氏はコミュニケーションに重きを置く。年に数回、懇親会も開催

コンサルタントの支援を
組織運営に活用

組織運営では医業経営コンサルタントの支援も活用している。「考え方とかやり方を、かなり具体的に教示してもらっている」。

診療報酬や経営構造については、職員とも共有している。「患者さんが来て薬を出しただけでは、実はそんなに利益にならない。収益構造をスタッフにも把握してもらうことが、ひいては医療の質の向上につながる」。

過去には水害を機に診療所を移転したことも。「洪水を機に移転して規模を広げたら、スタッフ動線がうまくいかなくなったことがあり、コンサルタントに動線や業務を整理してもらった」。それにより現在は、看護部門と事務部門が有機的に連携し機能する運営体制が構築されているという。

理事長・院長の須藤一氏

理事長・院長 須藤 一 氏

1990年順天堂大学医学部卒業。同大皮膚科に入局し、1996年同大医学部大学院学位取得(医学博士)、1996年皮膚科助手、1998年同講師、同大アトピー疾患研究センター講師、1999年同大大学院講師、2001年同大病棟医長、2002年米国スタンフォード大学留学(3年半)、2008年アトピー疾患研究センター准教授などを経て、2012年須藤皮膚科医院院長に就任。麹町皮ふ科・形成外科クリニック(東京都千代田区)非常勤医師(月1回)。機構皮膚科専門医。日本研究皮膚科学会、小児皮膚科学会、接触皮膚炎学会、皮膚アレルギー学会、日本アレルギー学会、日本免疫学会、医真菌学会などに所属。

処方して終わりではなく

最後に、短時間診療でも1回の診療で治す秘策をうかがった。「『この軟膏を出します』では終わらず、必ず使い方、塗り方までを教え、塗り心地などまで確認する。院内処方の利点として実演方式で『ここからこのくらい出して、この辺にはこう塗って』と、かなり細かくやっています」。

そして1回の受診で治すことを目標にしつつも、「薬を渡したら終わりでなくて、きちんと治るところまで付き合う。その心持ちが大事です」。

支え続けるために

今後については、「今のところ大きく変える必要性は感じていない。現状をしっかりと維持していきたい」と話す。一方で、新薬や新しい治療法には、継続的に取り組む姿勢を崩していない。

「新しい薬がたくさん出ているので、きちんと勉強して効果的に使えるようにしないといけない。高額な治療について、『当局から指導が来ることもあるのでやらないほうが』とも言われているが、そうではないと思っている」ときっぱり。

須藤氏は今も大学の研究センターに非常勤講師として席を残している。また月に1回、都内の皮膚科診療所でも非常勤医師として臨床に携わる。それらすべての経験を、患者への最適な医療サービスの提供に昇華させている。

須藤皮膚科医院の受付須藤皮膚科医院の待合室須藤皮膚科医院の処置室
移転後に拡大したことで一時混乱した院内は、コンサルタントに動線や業務を整理してもらい各部署、各部門が有機的に連携機能している

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