2026年6月号・REPORT ルポ3
市立青梅総合医療センター
REPORT
首都・東京における地域医療の姿
都内異色の医療圏で高度急性期を担う
地方と同じ状況に直面、
患者・職員の確保
市立青梅総合医療センターがある西多摩医療圏は、東京の二次医療圏13の中で島しょ部に次いで特殊な地域。4市3町1村で東京都の25%以上の面積を占めながら、人口は37万人(2024年)で右肩下がりの減少が予測されている。高齢化率は30.7%と都全体より8ポイント以上高く、全国平均並み。病院長の大友建一郎氏は、「東京都でありながら地方の様相だ」と言う。
2050年にかけて人口は30万人を切り、高齢化率は50%近くに達する一方、生産年齢人口は2020年の3分の2にまで減る見通し。大友氏は「減り方も急激で患者と医療従事者、両方の確保が課題になっている。すでに外来患者数は、2025年にピークアウトしている」と経営環境の厳しさを指摘する。

市立青梅総合医療センターの概要
- 所在地
- 東京都青梅市東青梅4丁目16番地5
- 開設者
- 青梅市長
- 病院長
- 大友建一郎
- 診療科
- 31科
- 病床数・機能
- 501床(一般465、精神30、感染症6) 内訳:急性期一般入院料1、精神病棟10対1入院基本料、緩和ケア病棟入院料2(16床)、救命救急入院料1(24床)ほか。6月以降急性期病院A一般入院料などの届け出を予定
- 主な指定
- 救命救急センター、地域がん診療連携拠点病院、エイズ診療拠点病院、第二種感染症指定医療機関、東京都周産期連携病院、地域医療支援病院、東京都災害拠点病院、臨床研修病院ほか
救急部門の動線を改善
手厚い人員で「最後の砦」

青梅市立総合病院時代の1984年に病院長に就任した星和夫氏が、高度急性期医療を柱に据える方針を打ち出して以来、2000年に救命救急センターを完成させるなど機能強化が図られてきた。大友氏は1999年に赴任し2019年に病院長に就任、翌年から新病院整備に着手した。すでに本館の新築と西館の改修を終え、2030年に全工事が完了する計画だ。
整備の第1方針は救命救急センターのさらなる機能強化だ。中山間地を含む広い西多摩医療圏ただ1つの三次救急医療機関として、滑落事故などの現場でホバリングができる、大型機の離発着が可能なヘリポートを本館屋上に設置。最初の1年間で40件の搬送を受け入れた。3階のICU、手術室、心カテ室や1階の救命救急センターと専用エレベーターで結び、一刻も早い診断・治療が可能な体制を構築(図表1)。医療圏唯一の24時間対応の小児科外来などを隣に置き、救急とつながりが深い部門の動線も短縮した。

出所:市立青梅総合医療センター提供資料より
夜間・休日でもセンターの医師3~5人(救急科1、2人と初期研修医)に加え、外科や小児科の医師も含めた院内当直8人の体制で救急外来の診療にあたっている。「西多摩の救急医療の最後の砦を自負している。都内だが急性期病院は少ない地域だから、一次救急も断らずに受け入れている」(大友氏)。
2024年度には5,724台の救急車などにより2万2,000人近い患者を受け入れた。救急搬送への応需率は66.1%。都内に28ある救命救急センター中7位だ。
多彩な手術室を増設
次のパンデミック対策も
がん、心臓病、脳卒中などに関する高度な急性期・専門医療の拡充も新病院の狙いの1つ。大友氏は、「最も近い高度急性期型の病院まで車で30分ほどかかるから、できるだけ西多摩で医療を完結させたい」と話す。
原則として外来部門は2階に集約、検査部門の隣に配置した。化学療法を行う外来治療センターは22床から28床に増床し、がん相談支援センターの隣に。病棟は内科と外科を一体化して心臓血管、消化器といった臓器別センターごとに設けた。


手術室は7室から10室に増やし、手術台と血管造影装置を組み合わせたハイブリッド型や無菌・陰圧の部屋を増設。手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」も置き、前立腺や胃・大腸、子宮などのがん手術に活用中だ。2024年度に手掛けたがん手術630件のうち、内視鏡・腹腔鏡などによる鏡視下手術は395件。こうした低侵襲手術をさらに増やす考えだ。心臓病治療でも、外科手術216件に対しカテーテル手術は778件に上る。
整備開始が2020年だったため感染症対策を施せた。第二種感染症指定医療機関として呼吸器病センター病棟に感染症病床6床を設けたほか、都の結核モデル事業病棟2床を含め計8床の陰圧個室がある。救命救急センターには、動線を別にした上で発熱外来を設置。感染症病床は、新興感染症のパンデミック時には扉で仕切った感染症エリアを最大38床まで拡大できる設計になっている。給気量・排気量の調節により病棟内に空気の流れを生み出す、病室の給気孔・排気孔の位置を工夫するなど、すべての病棟で感染防止対策も行っている。
精神は身体合併症に重点
看護師定着には苦労も
柱の救命救急、高度な急性期・専門医療以外に、市立青梅総合医療センターは政策医療・不採算医療を行うべき自治体病院として様々な役割を担っている。
精神病棟を30床設置し、都の精神科身体合併症入院指定病院となっているのもその1つ。医療圏内に精神科病院は少なくないが、入院患者の高齢化が進む中で対応が難しい身体合併症患者が増えてきており、2025年度は前年度より50件ほど多い148件の患者を受け入れた。結核モデル病床でも他の疾患を併せ持つ患者を受け入れている。
ほかに、①東京都周産期連携病院として2024年度に410件の分娩を取り扱う、②免震構造の採用や災害時の被災者受け入れといった災害拠点病院としての機能、③臨床研修病院として初期研修医を受け入れ、専攻医やコメディカルの学生を含めて教育・研修を行う――などを果たしている。
多様な機能を持つ市立青梅総合医療センターだが、直面している課題も少なくない。まずは看護師の確保。看護師の不足により入院患者の受け入れや手術室の利用に影響が生じた。「病床利用率を70%に抑えているため救急患者用の空きベッドが確保できず、入院があるたびに苦労している」(大友氏)。
最近の看護師数(実働)は図表2のとおり。埼玉県の学校にも募集をかけたり、既卒者の求人を強化したりした成果が採用面で出ている。定着面ではメンタル面のフォローにも力を入れており、高度急性期医療が中心で業務が厳しい中で、毎年の退職率は5〜7%程度に抑えている。

注)カッコ内は各年度初め(4月15日)の新卒・既卒の採用者数。中途・退職は、その年度中の採用および退職者数を示す。
出所:市立青梅総合医療センター提供資料を基に筆者作図
唯一の地域医療支援病院
下り搬送・後方連携も重視
病床不足の解決には、地域連携、特に後方病床の確保と下り搬送の充実がカギになる。医療圏で唯一の地域医療支援病院として、市立青梅総合医療センターはかかりつけ医などとの連携に力を入れてきた。2024年度の紹介率は75.1%、逆紹介率は105.4%。放射線診断機器の診療所との共同利用も590件を数えている。当日の緊急受診要請に医師が直接PHSで対応しているほか、医師会の地域医療情報ネットワークに加入して、かかりつけ医がWEB経由で入院患者の電子カルテを閲覧できる――など、ICTを活用した連携にも取り組んでいる。
西多摩医療圏の人口10万人当たり療養病床数は、都全体の3倍を超えている。だが、地域包括ケアや回復期リハビリテーションなど旧回復期の病床は足りないという。人口当たりの急性期の病床数も全体を下回っている。市立青梅総合医療センターの下り搬送実績は、2024年10月~2025年4月で33件。さらに増やしたいところだが、その制約にもなりかねない。
同センターは、2023年に2027年度までの5年間の経営強化プランを策定した。2025年度の計画は、医業収益が約187億円、医業収支の赤字が約30億円。これに対し実績見込みはそれぞれ約190億円と約35億円。収益は計画を上回る見通しだが、物価高などで費用が計画より8億円以上膨らんだ。大友氏は、「新築に伴う20億円超の減価償却費を計上している点を考慮すれば、ほぼプランどおりといえる。看護師を増員して入院患者をもう少し増やしたい」と話す。

注)カッコ内は2024年度決算比。医業外収益の内訳は、国・東京都からが13.3億円、青梅市から11.1億円など。
出所:市立青梅総合医療センター提供資料を基に筆者作図
新設の急性期病院Aへ
複数機能選択の可能性も
ただ急性期病院に手厚い2026年度診療報酬改定の結果、入院収入は増加しそうだ。地域の拠点病院向けの急性期病院A一般入院料は問題なく届け出できそう。急性期総合体制加算も、最高ランクを目指すという。「改定により一定の恩恵を受ける。ただこれから人口減少が本格化する中で患者をどう確保するかが不安材料だ」(大友氏)。
市立青梅総合医療センターは、DPC対象病院の中で、診療密度や医師研修などが大学病院本院に次ぐレベルのDPC特定病院群に指定されている。新しい地域医療構想では急性期拠点機能がぴったりだが、西多摩医療圏は人口30万人が目安の「人口の少ない地域」に該当する。高齢者救急・地域急性期機能や在宅医療等連携機能も求められるかもしれない。
高度な急性期・専門医療と救急医療との両立を念頭に、大友氏は、「夜間・休日の救急患者は当院で初療を行い、翌日に下り搬送する体制を構築したい。高齢の救急患者の増加をにらみ、平日日中の軽症救急を地域全体で受け入れる体制や、市の夜間・休日診療所との協力関係の強化も必要になる」と指摘している。
(本誌編集専門委員 井上 俊明)